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THE ROLLING STONES - STOCKHOLM 2017(2CD)
Live at Friends Arena, Stockholm, Sweden 12th October 2017

 

　今回のツアーはどの公演もそれぞれの特徴がはっきりしていて本当に面白い。デュッセルドルフと同時リリースとなるストーンズ最新「NO FILTER」ツアーから10月12日のストックホルム公演ですが、これが、また同ツアー始まって以来とも言える力強さをたたえた演奏ぶり。確かにストーンズはチューリッヒで彼ら本来の調子を取り戻しました。そこから今回のデュセルドルフのような勢いに溢れた快演までも登場。本当にドキドキ、ハラハラそしてワクワクさせられるツアーとなりました。そしてこのストックホルムなのですが、先に申し上げましたように力強くて安定感抜群なのです。裏を返せばデュッセルドルフのような勢いはショーの開始当初に感じられない。にもかかわらず演奏がとにかく力強いのです。ここストックホルムにて、ストーンズは現在の彼らが無理なく生み出せる演奏の力強さを見つけ出したのかもしれません。

　その最たる例が「It's Only Rock 'n Roll」。ツアー開始当初、それこそ止まってしまいそうなほど遅いテンポで演奏されていました。ここストックホルムにおいても、あれから速度が大幅に上がった訳ではありません。にもかかわらず、ここでは実にどっしりと演奏されていて「止まってしまいそう」な調子には映っていない。それが大きな違いでしょう。つまり、演奏のハラハラ感が払拭されたのです。

　よってデュッセルドルフのような勢いとは違った魅力を放ち続けたのがこの日のストーンズの演奏ぶりという訳なのですが、それでも今回のツアーで絶大な効力をバンドにもたらしている「BLUE&LONESOME」からの二曲は特別な勢いが溢れます。ツアー開始当初から既に素晴らしい仕上がりを見せていたこれら二曲、ここにきてライブ・レパートリーとしてネクスト・レヴェルに到達したのでは？と思えるほど。逆に言えば、これら二曲でここまで素晴らしい演奏を聞かせてくれるのだから、この日バンドが奏でる演奏のクオリティは保障されたようなもの。この日は「Under My Thumb」が演奏されているのも魅力的ですが、その出来が「NO FILTER」ツアー中ベストだと断言できるのも当然のことかと。

 

　ある意味では「普通に好調なストーンズ・ショー」といった雰囲気なのですが、この「普通」さを今回の「NO FILTER」ツアーでは新鮮に映ってしまうという（笑）。こうして前半だけでもストックホルムのストーンズがトップ・コンディションにあることをお解りいただけるかと思います。そんな中で選ばれたこの日のリクエスト・ソングが「Sweet Virginia」というのがまたドンピシャ。スローなアコースティック・ナンバーが功を奏しただけでなく、昨年のデザート・トリップ二日目以来のライブ演奏であるばかりか、そこでの演奏をも凌駕する素晴らしいもの。やはりこの日のストーンズの好調ぶりはリクエスト・ナンバーにまではっきりと現れているのです。

　そうした中でキース・コーナーの二曲だけは、いかにも彼らしく非常にルーズな調子でイントロが始まってしまいますが、それでもなおバンドの演奏はしっかりしている。もちろんタイトさが増した訳ではないのですが、ツアー序盤のような今にも止まってしまいそうな危うさが払拭されている。

 

　やはり全体的に絶好調なのがこの日のストーンズ。ショー中盤から終盤にかけて聞かれる演奏がまた「いつも通りのストーンズ」。そんな中で面白いのが「Street Fighting Man」。この曲もまたチューリッヒで往年の勢いを取り戻した曲ですが、ここでは途中からバンドの演奏が暴走しだしてしまい、いつ終えるとも解らないような飽和状態に向かいかけてしまいます。結局は元のさやに納まって演奏が終わるのですが、まるで演奏が乱れかけてしまったことを悔いたかのようにキースが一人でもうワン・フレーズ弾いて演奏が締めくくられるのが面白い。それはここまでのいい感じに演奏出来ていたことの証とも呼べるでしょう。ツアー序盤のような締まりのなさから来た混乱ではなく、むしろ各人のやる気が空回りしたからこそ、このような展開になってしまったのではと。いずれにせよ、ヒヤヒヤするようなハプニングと言うよりも、むしろ面白い混乱だと言えるでしょう。

　それにこの演奏を境として、この日のキースは勢いづいたようにも感じられるのです。その最高に愉快な場面が「Start Me Up」のイントロ。明らかにフライング気味にキースが始めてしまったことから、すぐに手を止めています。そこで機転を利かせたミックが「Take 2!」と発してから仕切り直しで演奏が始まるのだから何とも愉快。さらにキースは「Jumping Jack Flash」においてもイントロをフライング、「Satisfaction」ではイントロじらすなど、演奏するのが楽しくて仕方ない様子が伝わってきました。

 

　そして今回限定のプレスCDにてリリースされる音源ですが、元になったオーディエンス録音の音質が実に素晴らしい。その音質ランクは初日ハンブルクとルッカに並ぶレベル。つまりオンな音像な迫力たっぷりの音源ということ。これにて「NO FILTER」ツアー最高音質オーディエンス録音の三強が出揃ったことになります。そのオンな音像だけでなく、ここにちょっぴり加味されたエコー感がまた絶妙。音像が近くもマイルドな味わいの音質が他の高音質二公演とはちがった大きな魅力となっています。

　今回のリリースに当たってはそのエコー感を微調整ながらも手を加え、より聞き心地の良さがアッパーな段階へと進化。それにこの高音質がストックホルムでストーンズが聞かせてくれた頼もしい演奏ぶりをリアルにドキュメントしてくれる。今週の「NO FILTER」ツアーからの二タイトルリリースはどちらも演奏内容が本当に充実していますが、それぞれの雰囲気や魅力はまったく違う。勢いのデュセルドルフと力強さのストックホルム。言うなれば「柔」と「剛」それぞれの魅力が演奏から溢れている。そんな二つの名演の聞き比べも楽しめます！

 

Disc 1 (71:17)
1. Sympathy for the Devil 2. It's Only Rock 'n Roll 3. Tumbling Dice 4. Just Your Fool
5. Ride 'Em on Down 6. Under My Thumb 7. Sweet Virginia 8. You Can't Always Get What You Want
9. Paint It Black 10. Honky Tonk Women 11. Band Introductions 12. Happy 13. Slipping Away

 

Disc 2 (62:11)
1. Miss You 2. Midnight Rambler 3. Street Fighting Man 4. Start Me Up 5. Brown Sugar
6. Jumping Jack Flash 7. Gimme Shelter 8. Satisfaction