THE ROLLING STONES - ATLANTA 1989(4CD)
Live at Grant Field, Atlanta, GA. USA 21st November 1989
ローリング・ストーンズの復活と久々のツアーということが大きな話題を呼んだ割に、アイテムが思いのほか少ないのが1989年のアメリカ・ツアー。あれだけの話題を振りまき、しかも長期の日程で行われたことを考えると、何とも不思議な状況ではないでしょうか。
例えば11月などは当店がプロショット映像の決定版「DALLAS 1989 2ND NIGHT」をリリースした11日のダラス公演しかまともなアイテムが存在しないというありさま。実を言うと89年11月行程からは、もう一つアイテムが出されていたのです。それもひっそりと。それが11月21日のアトランタ公演。この日の音源は「BACK IN BUSINESS」というCDがリリースされていました。出したのは90年代前半に一世を風靡したKiss The Stoneレーベル系列のBig Musicというブランド。
元々89年のアメリカ・ツアーはツアーの開始からアイテムが登場するまでのペースが遅く、おまけにLPからCDへの過度期にも当たってしまったことから、当初はLPでしかも音質の冴えないアイテムばかりがリリースされていたように思います。反対に「BACK IN BUSINESS」はツアー終了から数年が経過したところでひっそりとリリースされていました。もうその頃にはアトランティック・シティのプロショット映像やサウンドボード、さらには先のダラスを始めとしたいくつかの公演の流出映像が出回っていたことから、今になってオーディエンス録音を収録した「BACK IN BUSINESS」が注目を浴びるにはタイミングが非常に悪かった。
それ以上に「BACK IN BUSINESS」の印象を悪くしたのは、何と言っても収録状態でしょう。ピッチが遅いままで収録されていた上に、ライブ後半の数曲が未収録というマイナス・ポイントの多さ。しかし音質自体はかなり良好であり、89年アメリカ・ツアーのオーディエンス録音としては、掛け値なしに上位へランクされるべきクオリティの高さだったのです。大会場ばかりだった89年ツアーの中では、驚くほどオンな音質が素晴らしかった。それだけに収録状態のまずさが如何ともしがたく、そのせいでごく一部のマニアにしか注目されなかった悲運のアイテムだったのです。
ところが最近になって、このアトランタ公演を捉えたオーディエンス録音の別音源が登場しました。アップロードしてくれたのはおなじみJEMS。それだけに音質はさすがのクオリティ。いかにもカセットによる野外会場でのオーディエンス録音的な、高域が目立つ音質がいい意味で時代を感じさせてくれます。それにJEMSチームが発掘してくれた音源だけのことはあり、大会場での録音ながらも驚きのオンな音像が素晴らしい！
ツアー自体も開始から三か月目に突入していた時期だけに、演奏はもはや盤石の域。ストーンズのライブ史上、もっともシュアーな演奏を聞かせていた時代の幕開けと言えた1989年。それでもなお、この日の演奏のタイトさは際立っています。今では忘れ去られたように思われますが、89年のツアー開始当初、もっとも取り沙汰されたのはチャーリーのドラミングでした。というよりも、まだ50前ながらも初老を思わせるルックスのせいで「チャーリーはドラムを叩けるのか？」と言われたもの。
ところが、いざツアーが始まってみればそれまでと何ら変わりのない、それどころかさらに快調なドラミングを聴かせてくれる彼の姿がはっきり捉えられています。この日のレア・ナンバーとなった「Dead Flowers」などは、その最たる例でしょう。
一方で久々のツアー再開に際し、ミックが新たなテクノロジーと大量のサポート・メンバーを加えた結果、それまでのストーンズのライブ・サウンドと比べてギターの比重が薄れてしまったのも事実。復活シングルとして大きな話題を呼んだ「Mixed Emotions」においては、マット・クリフォードのシンセ音が一番目立ったバランスで鳴っているのがその典型的な例でしょう。「Bitch」に至ってはギターの代わりにキーボードがリフを弾くアレンジも同様。そんなサウンドが今となってはむしろ懐かしく響くのも時間が経過したおかげかと。
一方でJEMSによる今回の新音源ですが、音像の近さが大きな魅力である一方で周囲の盛り上がりが終始騒がしく、またテーパー自身も盛り上がっていたのか、音像が揺れやすいというマイナス・ポイントがある点は否めない。例えば「Dead Flowers」が大合唱になるなど、何ともアメリカらしい光景が捉えられている。その点、先に挙げた「BACK IN BUSINESS」の音源はグッと落ち着いた録音状態であり、リスニング上のストレスはJEMS音源よりも格段に低い。そこで今回のリリースですが、Disc-3&4には「BACK IN～」をリマスターし、未収録だった曲はJEMS音源で補填することによって、両者のいいとこ取りしたようなバージョンも同時に収録と相成りました。
もちろん最大の欠点である低すぎたピッチを徹底的にアジャスト。さらには若干ながら暗めだった音質の抜けをよくするイコライズをほどこしたことにより、元々89年ツアーの中でも優良クオリティを誇った「BACK IN～」が俄然楽しめるアッパー版へと進化を遂げたのです！今となっては「BACK IN～」自体を知らないマニアの方が多いかと思われますが1989年ツアー、11月の日程にはこれほど「聞き込める」オーディエンス録音が存在していた事に驚かされること間違いなし。よりコアなマニアの方であれば、「BACK IN～」のピッチを懸命に正して聞いていた手間から解放されるという（笑）。
このように今回の限定のプレスCDリリースはアトランタ公演における二種類の音源をカップリングした四枚組というスタイルとなります。どちらのオーディエンス録音も非常に良好な音質であることに変わりはありませんが、その録音状態や音質がまったく異なることから、じっくりと聞き比べが楽しめる音源であると断言いたします。そして何よりも、両方の音源の特性を活かしきった収録がそれぞれのディスクで実現しました。JEMS音源は曲の欠損こそありませんが、カセット録音ということから、いくつかの曲間において生じたカットを今度は「BACK IN BUSINESS」で補填したという、これぞいいとこ取り！
Recorder 1
Disc 1 (73:30)
1. Continental Drift 2. Start Me Up 3. Bitch 4. Sad Sad Sad 5. Undercover Of The Night
6. Harlem Shuffle 7. Tumbling Dice 8. Miss You 9. Ruby Tuesday 10. Angie
11. Dead Flowers 12. Rock And A Hard Place 13. Mixed Emotions 14. Honky Tonk Women
15. Midnight Rambler
Disc 2 (77:38)
1. You Can't Always Get What You Want 2. Can't Be Seen 3. Happy 4. Paint It Black
5. 2000 Light Years From Home 6. Sympathy For The Devil 7. Gimme Shelter
8. It's Only Rock'n Roll 9. Brown Sugar 10. Satisfaction 11. Jumping Jack Flash
Recorder 2
Disc 3 (73:29)
1. Continental Drift 2. Start Me Up 3. Bitch 4. Sad Sad Sad 5. Undercover Of The Night
6. Harlem Shuffle 7. Tumbling Dice 8. Miss You 9. Ruby Tuesday 10. Angie
11. Dead Flowers 12. Rock And A Hard Place 13. Mixed Emotions 14. Honky Tonk Women
15. Midnight Rambler
Disc 4 (77:45)
1. You Can't Always Get What You Want 2. Can't Be Seen 3. Happy 4. Paint It Black
5. 2000 Light Years From Home 6. Sympathy For The Devil 7. Gimme Shelter 8. It's Only Rock'n Roll
9. Brown Sugar 10. Satisfaction 11. Jumping Jack Flash
(メーカーインフォによる）
