1979年に実現したBOSTON伝説の初来日。その驚異の世界初公開ライヴアルバムの登場です。本作を記録したのは、QUEENの『NAGOYA 1975（Wardour-249）』『BUDOKAN 1979 2ND NIGHT（Wardour-250）』で衝撃を振りまいた録音家。どちらも世界初公開にも関わらず、凄まじいハイクオリティ・サウンドでド肝を抜きましたが、その第３弾になるオーディエンス録音なのです。

　その要は素晴らしいサウンドにあるわけですが、ショウも極めて貴重。本作に収められているのは「1979年４月19日：日本武道館」公演。まずは、伝説の初来日“CHERRY BLOSSOM TOUR '79”を日程で振り返ってみましょう。

 

・４月13日：大阪府立体育館
・４月14日：大阪府立体育館
・４月16日：九電記念体育館
・４月18日：日本武道館『THE HOTTEST BAND IN A GALAXY』
・４月19日：日本武道館　【本作】
・４月20日：日本武道館『FIRST ENCOUNTER』

 

　以上、全６公演。当店では『FIRST ENCOUNTER（Trial-240）』『THE HOTTEST BAND IN A GALAXY（Zion-014）』といった傑作でアーカイヴしてきましたが、それは日本武道館の初日と３日目。本作は、そのどちらとも違う２日目の特級オーディエンス・アルバムなのです。

　そのクオリティは、まさに最高峰・最高傑作と呼ぶに相応しい。既発も素晴らしい傑作であり、特にプレス・タイトル『THE HOTTEST BAND IN A GALAXY』は、日本公演の希少価値を超えて“1979年ベストの１つ”とさえ激賞された大傑作でした。ところが、本作はその頂点を更新してしまうサウンド。クリアさは『THE HOTTEST BAND IN A GALAXY』と五分ですが、驚異的なのはダイレクト感。演奏と歌声がオンに捉えられており、グッと前に迫ってくる。もちろん、「まるでサウンドボード」と呼ぶタイプでこそありませんが、70年代の日本武道館録音としては驚異的に明るく、空気感も透き通っている。楽音の芯も骨太なら、スペーシーな鳴りはヴァイヴレーションの波形が目に浮かぶほど繊細なのです。

　さらに素晴らしいのは、瑞々しい鮮度。録音家本人から直接譲られた大元マスターならではのサウンドは美麗・端麗。ダビング痕も経年劣化もまるでなく、歪みも濁りも一切ない。まるで1979年の日本武道館と2017年のスピーカーがパイプで直結しているかのよう。それこそ、現場の埃っぽい匂いや冷気まで、そっくりそのまま流れ出てくるようなリアリティなのです。録音自体が素晴らしい事もありますが、軋みながら消えるロングトーンは、その端が八角形の空間に吸い込まれていく刹那まで鮮やか。まさに、目の前で生み出された“音”が手元に届く実感があるのです。

　しかも、そのサウンドで描かれる現場が伝説の初来日なのですからたまらない。セットは大名盤『幻想飛行』『DON'T LOOK BACK』から６曲ずつのベスト・セレクトに未発表曲「Help Me To Forget（Shattered Images）」「Television Politician」を交えたもの。それを大名盤そのものなバンド・ポテンシャルで演じていくわけです。しかも、この来日公演ではライヴアルバムの制作も予定されており、熱演の隅々から気迫が溢れてくる。そんな熱気が１曲１曲から滲むわけですが、それを目の当たりにした観客の熱狂もまた素晴らしい。あの精緻なアルバムの世界を本当に５人で再現していく……その精緻なアンサンブルに驚きつつも、美しいメロディと一体化する手拍子の海がスペクタクル。あまりに広大でもう少しで演奏を凌駕しかねないシーンもあったりしますが、それを本作の逞しい楽音が許さない。むしろ、リズム隊の一部にまでなる日本人のリズム感の良さとスペーシーなサウンドのスペクタクルが相まってスケール感にまで昇華されている。大騒ぎする欧米とは違う、日本だけのBOSTON空間が醸されるのです。

 

　まさか、この後35年間も再訪が叶わなかったとは、未だに信じられない。それだけ日本武道館の空間が幸福感に充ち満ちたコンサートです。その現場を、これまでの最高音質記録を更新する素晴らしいサウンドで描ききったライヴアルバムの大傑作。伝説の初来日公演を生体験できる極上の新発掘アルバムなのです。美しくも親しげな名曲に酔いしれ、初来日の喜びに囲まれるドキュメント録音。38年の時を超えて甦った奇跡のマスター・サウンドを思う存分、お楽しみください。

 

★1979年日本公演ではベストの音質です。

Disc 1 (36:45)
1. Intro 2. Rock And Roll Band 3. Help Me To Forget 4. Peace Of Mind 5. Feelin' Satisfied
6. Don't Look Back 7. The Journey 8. More Than A Feeling

 

Disc 2 (64:28)
1. A Man I'll Never Be 2. Smokin' 3. Guitar Solo 4. This Time 5. Foreplay/Long Time
6. Something About You 7. Party 8. Television Politician 9. Don't Be Afraid

 

Tom Scholz - Guitar & Keyboards Brad Delp - Vocal Barry Goudreau - Guitar
Fran Sheehan - Bass Sib Hashian - Drums