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THE BEATLES - PHILADELPHIA 1964: SOUNDBOARD REEL TO REEL(1CD)
Live at Convention Hall, Philadelphia, PA, USA 2nd September 1964 SBD(UPGRADE & LONGER!)

 

　「ウイスキーフラット」と言えばストーンズにとっての「ナスティ」と同じようにマニアでなくとも一度は聞いたことがあるのでは？というビートルズ1964年アメリカツアー定番中の定番。アナログ時代から「ウイスキーフラット」の名の下で出され続け、オリジナルと言われるWARLUS盤、もっともポピュラーなTMOQ盤など数え切れないほどのアイテムを生み出してきました。ただし「ALIVE AT LAST」あるいは「IN CONCERT AT WHISKEY FLAT」というタイトルでリリースされてくるなど、当初から会場名や日時が釈然としない64年アメリカツアーからの音源でもありました。

　CD時代に入ると、とりあえず9月2日のフィラデルフィアはコンベンション・ホールでの録音ということで暫定的に落ち着き、今回も含め基本的にはフィラデルフィアの名のもとでリリースが続くことになります。ところが音源だけでなくさまざまな64年アメリカツアーの映像が発掘され、他でもない9月2日の映像も登場すると、どうやら「ウイスキーフラット」はフィラデルフィアではなかった…とそれまでの定説が覆されてしまいます。この音源の録音日や会場に関しては今なお世界中のマニアのあいだで議論が続いており、いくつかの会場が挙げられるものの、それでも断定するまでには至っていません。

　それでもなお「ウイスキーフラット」が現在まで愛され続けているのは、その音質と演奏の両方を兼ね備えた優良モノラル・サウンドボード音源であることに他ならない。もちろんクオリティ的に3トラックのステレオレコーディングだったオフィシャルのハリウッド・ボウルには叶わない。それを補って余りある勢いに溢れた演奏とモノラルで独特の迫力を兼ね備えた音質というのが秘訣。

 

　それ故にCDでも多くのタイトルがリリースされ続けてきましたが、近年でもっともポピュラーであったのはIMPレーベルの「PHILADELPHIA 1964 OFF REEL」かと思われます。ところがWARLUS盤LPと比べて若干ながら収録時間の短い個所が散見され、実はそこからの盤起こしが元になっていたのではという問題提起が同LPからの収録という形リリースされた「ALIVE AT LAST PLUS」によって提言されました。ですが、一般的には「PHILADELPHIA 1964～」（以下“既発盤”と称します）がポピュラーなのは確かで、それによって定番「ウイスキーフラット」に触れたマニアが多かったかと思われます。

　ところがこの6月、何の前触れもなしに「ウイスキーフラット」音源のアッパー版が登場しました。それを公開してくれたのはおなじみKrw_co。彼がビートルズの音源まで網羅していたというだけでも十分な驚きなのですが、何より一聴して解るアッパー感。まず音そのものが非常にすっきりとしていてナチュラル。今回のバージョンと比べると既発盤（「ALIVE AT LAST PLUS」を除く）を始めとして、過去に出されてきたさまざまなCDバージョンは曲間を中心としてヒスノイズやハムノイズが気になり、中でもヒスに関しては過去のリリースが随分と盛大に入ってしまったように思えるほど。おまけに既発盤でLPを基にしたが故に生じたと思われる僅かな欠損（例えばエンディングがフェイドアウトせず今回はハウリングが僅かに長く収録）もない。何よりヒスの減退した音質のアッパー感は本当に素晴らしい。

　それだけに、この超有名64年アメリカツアーのサウンドボードのアッパー版が2022年になって出土するとは本当に驚き。それもそのはず、今回のバージョンはかのジョー・ポープが所有していたものだと明記されていたのです。彼の名は最近でも「THE COMPLETE JOE POPE TAPES」と「BBC BROADCASTS 1962-1964: JOE POPE REELS」のリリースも記憶に新しいビートルマニアの名士。ファンクラブを率いつつ、それでいてあのデッカ・テープを世に出した彼であれば「ウイスキーフラット」のアッパー版テープを秘匿していたとしても何ら不思議はない。むしろ納得のクオリティかと。

 

　そして何と言っても演奏がサイコー。オフィシャルのステレオ録音ハリウッド・ボウルも素晴らしいのですが、それ以上に勢いのあるビートルズの演奏。それがモノラルのソリッドな音質でなおさらリアルに捉えてくれている。この日の熱狂ぶり…というか熱狂にかき消されるまいとばかりに熱演を繰り広げているのが昔から愛され続けている「ウイスキーフラット」の色褪せない魅力でしょう。

　一方でジョンとポールがマイク一本で歌う「If I Fell」の最中でお互いが吹き出してしまうのも有名な場面ですが、そこからもライブに対して余裕と意欲のあった時代を偲ばせてくれるというもの。それでも演奏がダレることはまったくなく、むしろ64年アメリカツアーにおける必殺のパターンであったMCなしで「I Want To Hold Your Hand」を始めて観客を沸かせる場面の鮮烈さ。これこそこの日のステージの勢いを雄弁に物語る場面だと言っても過言ではありません。こうした演奏の切れ味がハリウッド・ボウルをも上回るのでは？という熱演がまた「ウイスキーフラット」を定番に至らしめていたのでした。

　そんな定番中の定番たる音源が2022年にまさかのアップグレード。未だに演奏会場や日時が釈然としないのはもどかしいものがありますが、それでも64年アメリカツアーというだけでなく、ビートルズのキャリア全体の中でも間違いなく上位に入るであろう名演かつ名録音。その新たなる定番がここに誕生！是非じっくりお楽しみください。

(30:36)
1. Opening
2. Twist And Shout
3. You Can't Do That
4. All My Loving
5. She Loves You
6. Things We Said Today
7. Roll Over Beethoven
8. Can't Buy Me, Love
9. If I Fell
10. I Want To Hold Your Hand
11. Boys
12. A Hard Day's Night
13. Long Tall Sally
14. Thank You