音質とミックスは文句のつけようのないもので、ピートが右、ジョンが左、ケニーがセンターから全チャンネルに振り分けられ、そこにサポート・キーボードが被さるというザ・フーのステージ隊形そのままが、超クリアなサウンドで迫ってきます。あまりのクリアさゆえに、Won’t get Fooled Again終盤では、ジョン・エントウィッスルがワウワウをかけてベースをプレイしていたことさえ判るほどです。何よりも嬉しいのは、まだツアー中盤につきロジャーの声がしっかり出ていることです。オフィシャル・リリースされた、最終のトロント公演を捉えたDVDでは声が出ず、かなり辛そうな彼の様子が観られましたが、ここではまったく不安はなく、彼本来のシャウトが随所で炸裂しています（中盤に痰がからんだ際のMCでは場内のエアコンがシンガーに悪影響を与えるんだ、とコメントしています）。これぞ、ロジャー。これぞ、ザ・フーです。連日、少しずつ変更されたセットリストにおいて、この日は初期ナンバーI Can See For Milesとラスト・アルバム「IT’S HARD」収録のA Man Is A Manを聴くことができるのが貴重です。中でも前者は、この曲が1967年にようやくアメリカでのブレイクをもたらしたという思いがピートの頭の中にあったことでセットインしたのではないかと思わせる、粋な選曲と言えます。後者は後のピートのソロワークにも通じる味わい深い詞と曲調の佳曲です。この日はアンコールで３曲も演奏しており、前日には未演奏だったNaked Eyeをやっているのがまた貴重です。ステージの全編を聴いていただければ、歴史上、この年に一旦正式に解散したザ・フーがこの公演で19年間のすべてを集大成していたことがお判りいただけるでしょう。オフィシャル・ライブ盤に優るとも劣らないウルトラスーパー・クオリティ・マスターの突然の発掘は「事件」と言っていいでしょう。全編で手抜き一切なし、切れ味鋭い演奏を畳み掛けるザ・フー最後の勇姿を最高のステレオ・ラインでお楽しみください。プレスCDでの限定リリースとなりますので、お早めのオーダーをお願い致します。
(メーカーインフォによる）