EMERSON, LAKE & PALMER - ROME & MILAN 1973(2CD)
Stadio Flaminio, Rome, Italy 2nd May 1973 STEREO SBD
Velodromo Vigorelli, Milan, Italy 4th May 1973 STEREO SBD
頂点作『恐怖の頭脳改革』の製作前夜にあった1973年春のEL&P。その超極上ステレオサウンドボード・アルバムが登場です。
そんな本作に記録されているのは、2公演「1973年5月2日ローマ公演」と「同5月4日ミラノ公演」のサウンドボード録音。ただし、それぞれ別々ではなく、両公演の音源を使用して編み上げられた1本のライヴアルバムです。実のところ、この音源はかつてオフィシャル化されたこともあるもの。EL&Pの場合、ブートレッグをコピーしただけの『FROM THE MANTICORE VAULTS』シリーズもあるので“公式お墨付き”の意味がなかったりする事も多々なのですが、本作は違う。大手BMG製作のボックス『FANFARE 1970 - 1997』でも目玉となっていた極上サウンドボード音源なのです。
その衝撃のクオリティに触れる前に、まずはショウのポジション。70年代EL&Pの活動は大まかに3つ「結成から1972年まで」「1973年/1974年期」「1977年/1978年期」に分けられますが、ここでは「1973年/1974年期」の全景から振り返ってみましょう。
●1973年
・3月30日-5月4日:欧州#1(22公演)←★ココ★
《6月-9月『恐怖の頭脳改革』制作》
・11月14日-12月18日:北米#1(30公演)
●1974年
・1月24日-4月6日:北米#2(34公演)
・4月18日-6月2日:欧州#2(29公演)
・7月26日-8月31日:北米#3(18公演)
これがEL&Pの1973年/1974年。結成から1972年まではほとんど休みなくレコーディングとツアーに明け暮れてきた3人ですが、1972年の暮れに初めての大型オフ。約4ヶ月の充電期間を経て、1973年3月末から再始動しました。この「1973年/1974年期」は大名盤『恐怖の頭脳改革』を核とした時期だったわけですが、本作の2公演はその製作寸前。「欧州#1」の20公演目と最終日にあたるコンサートでした。
本作は、そんな2公演で記録されたサウンドボード録音から製作されたライヴアルバムなわけですが、その組み合わせはやや複雑。ここでショウの構成に沿って音現パートも整理しておきましょう。
【DISC 1】
◎タルカス(5月4日ミラノ)
☆悪の教典♯9 第1印象パート1&2(5月2日ローマ)
◎スティル…ユー・ターン・ミー・オン(5月4日ミラノ)
☆ラッキー・マン(5月2日ローマ)
【DISC 2】
◎ピアノ・インプロヴィゼイション/石をとれ/ホウダウン(5月4日ミラノ)
☆展覧会の絵/ロンド(5月2日ローマ)
※注:「◎」印がローマ公演、「☆」印がミラノ公演。
……と、このようになっています。そして、そのクオリティこそが絶大。さすが公式ボックスでも目玉になるだけあって完全オフィシャル級であり、伝統盤『LADIES AND GENTLEMEN』にもまったく劣っていない……と言いますか、ムーグのダイレクト感に至っては伝統盤をも凌駕していると言っても良い。実のところ、「Still…You Turn Me On」に入る前の「Take A Pebble」パートが不完全だったりする(だから単独リリースされなかった!?)のですが、それ以外は堂々の名盤級クオリティなのです。
さらにもう1点、単独での作品化に至らなかったと思われるのは、演奏そのもの。まだレコーディングされていない新曲「Karn Evil 9」がかなりヤバい。「欧州#1」録音に慣れている方はご存じのことと思いますが、この時点ではまだ第1印象しか演奏していませんが、その中身も細部が煮詰められていない初期バージョン。単にアレンジが違うというだけでなく、演奏もこなれておらず、キメがめちゃくちゃでアンサンブルも崩壊寸前。それでも強引に曲を進めてしまうからEL&Pは強烈で、それを可能にしてしまうのが70年代の勢い。実は1973年録音は非常に人気が高いのですが、それは(図らずも)EL&Pの真髄である力業が全開だからこそ。
もちろん、「悪の教典♯9」以外は全盛の素晴らしさ。いかに長期の休み明けとは言っても20公演をこなしたアンサンブルは本領に達しており、史上最強・最高キーボード・トリオの絶頂ポテンシャルが炸裂。「Still…You Turn Me On」ではグレッグが朗々と歌いつつ、最後に「ノイズをくれ、くそったれども」とつぶやくと盛大な喝采が湧く。まさに“世界のEL&P”に登り詰めた大物然としたショウがたっぷりと楽しめるのです。
世紀の大名盤『恐怖の頭脳改革』まで、あと少し。全盛の演奏も垣間見えつつ、最高傑作を創り上げんとする産みの苦しみが透けていた1973年の春。そのショウを極上サウンドボードで味わい尽くせる大傑作です。公式ボックス『FANFARE 1970 - 1997』は「CD×18枚+BD+アナログ×5枚」という常軌を逸した巨大アイテムでしたし、目玉のサウンドボード・ライヴもアナログ盤。幾重ものハードルを越えた人間だけが知り得る秘宝でした。しかし、その中身はもっと広く知られ、聴かれるべき極上の世界だったのです。本作は、同じ極上サウンドボード音源をオフィシャル盤に負けないクオリティで永久保存したプレス2CD。いつでも、いつまでも、何度でも、心ゆくまで存分にお楽しみください。
Disc 1 (46:11)
1. Intro
2. Tarkus
3. Karn Evil 9 1st Impression Pt. 1
4. Karn Evil 9 1st Impression Pt. 2
5. Still…You Turn Me On
6. Lucky Man
Disc 2 (52:47)
1. Piano Improvisations
2. Take A Pebble
3. Hoedown
4. Pictures At An Exhibition
5. Rondo incl. Drum Solo
STEREO SOUNDBOARD RECORDING