BLACK SABBATH - THE BATTLE OF THE DEMOS 1985(1CDR, White Label)
Tony Iommi Vs. Geezer Butler featuring Jeff Fenholt STEREO SBD
40年を越えるBLACK SABBATHの歴史でもバンドが最も大きな混乱の渦中にあったのは、間違いなく'84年のイアン・ギラン脱退後から、トニー・アイオミが「SEVENTH STAR」で新たなスタートを切った'86年までの約3年間でしょう。その間もアイオミやギーザー・バトラーは、新たなシンガーを迎えてバンド再建を図ったり、各々ソロ活動を模索するなど、当時のSABBATHはまさに激動の真っ只中でした。
その'84年から'85年にかけてアイオミとギーザーが、ジェフ・フェンホルトという同一シンガーで製作した貴重なデモ音源の数々を網羅し、不明な点が多かった当時のSABBATHを浮き彫りにしたのが本作「THE BATTLE OF THE DEMOS 1985」。SABBATHファンの全てが驚き、バンド・ヒストリーの研究を大いに押し進めた本作は、今なおマニア必聴の一本です!
本作でメインに収録されているのは、トニー・アイオミがソロアルバムの下敷きとして製作した11曲のデモ音源。これらは最終的に現在私たちが知っている「SEVENTH STAR」となりますが、この時点ではジェフ・フェンホルトが、歌詞やメロディが大きく違うバージョンを歌っています。
メインで聴ける楽曲は5曲・8トラック。「Seventh Star」となる「Star Of India」に、名バラード「No Stranger To Love」の原型「Take My Heart」、「Turn To Stone」の原曲である「Eye Of The Storm」を、演奏もアレンジも異なる2つのバージョンで収め、さらに「Heart Like A Wheel」のプロトタイプ「Love On The Line」、「Danger Zone」の初期型である「Chance Of Love」も確かなクオリティで収録。どれも'80年代中期らしいメロディックで高品質なメタル・ナンバーを楽しめます。加えてトラック9からトラック11にかけては、同一メンバーによるリハーサル・セッション(トラック11は歌入り)をさらに3トラック聴く事が出来ます。
これら楽曲でジェフ・フェンホルトが披露するパフォーマンスは驚きの一言。彼はブロードウェイ・ミュージカル「JESUS CHRIST SUPERSTAR」のキャリアを持つ異色のシンガーで、クリーンかつ力強い見事な歌唱を聴かせてくれます。リズムセクションはLITA FORDから協力したゴードン・コープリー(ベース)とエリック・シンガー(ドラム)。デモとはいえすでにまとまりのあるバンド・サウンドが、楽曲をより魅力的なものとしています(アイオミのギターとキーボードのジェフ・ニコルズはもちろんご存知の通りです)。
既発で知られているテイクもありますが、本音源のより高いマスター鮮度は魅力的です。またきちんと整理された曲目も、聴き手により深いエンターテイメントと時代背景への理解をもたらしてくれるでしょう。
本作の後半、トラック12から16にかけてはギーザー・バトラーのデモを3曲・5トラック収録しています。これらは海外で「SEVENTH STAR」デモの一部として登場した際に「正体不明の偽物」とされていましたが、後に登場したギーザーの'85年ライヴで演奏が確認され、アイオミのソロ曲ではなく"GEEZER BUTLER BANDのデモ"と判明した音源です。
ここでギターを弾いているペドロ・ハウス(ギーザーの甥)はその後もギーザーのソロ・プロジェクトに参加していますが、その他のメンバーは全く異なり、ドラムは同時期のGARY MOOREでプレイしていたゲイリー・ファーガソン、キーボードは(マニアには懐かしい)SABBATHの初代キーボーディストであるジェラルド・ウッドルフがプレイしています。
そして最もマニアを驚かせたのが、アイオミと同じくジェフ・フェンホルトをシンガーに起用している点。ギーザーというとヘヴィでドゥーミーな印象が先行しますが、本音源では意外なほどメロディアスでポップな、ある意味AORに通じるサウンドを展開しており、最初の「Lock Myself Away」に、それぞれ2テイクある「Don't Turn Away」・「Love Has No Mercy」も、フェンホルトの歌声は完全にマッチしています。アイオミのデモと比べ曲数的に少ないのが残念ですが、聴き手に大きなショックとインパクトを与える、重大な5トラックです!
本作ではさらに衝撃的なトラックがラストで登場! イアン・ギランが脱退した'84年、彼の後任としてSABBATH正式採用されたデイヴ・ドナートが歌うデモ音源「No Way Out」です。
ここではアイオミとギーザー,キーボードのジェフ・ニコルズとシンガーのドナートに加え、オリジナル・ドラマーのビル・ワードが参加しています。しかも曲は(歌詞・メロディ違いとは言え)トニー・マーティン時代の名曲「The Shining」なのです! オリジナル・メンバー3人の演奏、ドナートが歌う唯一の楽曲、それが「The Shining」のプロトタイプと、同曲はまさに驚きの三重奏です!
同じくBLACK SABBATHの中心人物でありながら、本作ではアイオミとギーザーで異なる楽曲へのアプローチを、ひとりのシンガーで明確に浮かび上がらせています。優れた楽曲とほぼ完成された中味のエンターテイメント性も言う事なしの面白さ。BLACK SABBATHが事実上崩壊していた'84年から'86年、「BORN AGAIN」と「SEVENTH STAR」の間に位置するミッシング・リンクを75分間にわたり解き明かした本作は、全てのSABBATHマニアにとって必要欠くべからざる第一級の資料音源なのです! ギーザーのソロ・ライヴ音源「THE GEEZER BUTLER BAND」と併せ、マニア必聴の一本をこの機会にどうぞお楽しみください!
TONY IOMMI DEMOS (1985)
1. Star Of India #1 (Seventh Star) 2. Star Of India #2 (Seventh Star)
3. Take My Heart #1 (No Stranger To Love) 4. Take My Heart #2 (No Stranger To Love)
5. Eye Of The Storm #1 (Turn To Stone) 6. Eye Of The Storm #2 (Turn To Stone)
7. Love On The Line (Heart Like A Wheel) 8. Chance Of Love (Danger Zone)
9. UnKnown Instrumental #1 10. UnKnown Instrumental #2 11. Unknown Song
Tony Iommi - Guitar / Jeff Fenholt - Vocal / Gordon Copley - Bass / Eric
Singer - Drums / Geoff Nicholls - Keyboards & Backing Vocals
THE GEEZER BUTLER BAND DEMOS (1985)
12. Lock Myself Away (Can't Stand Much Longer) 13. Don't Turn Away #1 (Patrol)
14. Don't Turn Away #2 (Patrol) 15. Love Has No Mercy #1 (I'm Leaving)
16. Love Has No Mercy #2 (I'm Leaving)
Geezer Butler - Bass / Jeff Fenholt - Vocal / Pedro Howse - Guitar / Gary
Ferguson - Drums / Gerald Woodroffe - Keyboards
BONUS TRACK - BLACK SABBATH (1984)
17. No Way Out (The Shining)
Tony Iommi - Guitar / Dave Donato - Vocal / Geezer Butler - Bass / Bill
Ward - Drums / Geoff Nicholls - Keyboards
(メーカーインフォによる)