THE ROLLING STONES - FOXBORO 1997 2ND NIGHT(2CD)
Live at Foxboro Stadium, Foxboro, MA. USA 21st October 1997 TRULY PERFECT SOUND

 

　何と今年でバビロン・ツアーから20周年です。つい最近のツアーだとばかり思っていたのに、時の流れはあまりにも早い。我々にとっても1989年の復活後、三度目のストーンズのアルバム・リリースにライブ活動ということから、「これならストーンズは大丈夫」という気持ちで接していたものです。そのせいか、アルバムのリリースやツアー開始というトピックがマニア以外でそれほど盛り上がりを見せなかったのは事実。「BRIDGES TO BABYLON」もアルバムの内容そのものより、復活してから三枚目のアルバムということでインパクトが薄まってしまい、正当に評価されなかったのもまた事実でした。

　このアルバムを引っ提げたツアーのアイテムに関してもまたしかり。DATによるオーディエンス録音が普及しただけでなく、CD-Rの登場と相まって多くの数のライブがリリースされていたものです。特に1997年のアメリカ・ツアーに関しては、ほとんどの公演がリリースされたのでは？と思えるほど。しかし、バビロン・ツアーは終了するや否や、マニアの間での評価の下降がそれは早いものでした。おかげで数多く生み出されたアイテムが瞬く間にバーゲン品扱い。悲運の時期だったとしか言いようがありません。

　ところがツアーから十年が経過した2007年辺りから、マニアの間でバビロン・ツアーの再評価が始まり始め、何よりもキースが自伝の中でアルバムへの愛着を綴ってくれたことが、再評価に拍車をかける形となったのです。

　当店でもその機運を受けて1997年アメリカに関しては、ツアー初日のシカゴや11月のフォートワースのサウンドボードをリリースしてまいりましたが、今回はその中間に属する97年10月の行程からの初登場オーディエンス録音。この月に行われたボストンのフォックスボロ・スタジアムは都合二回ほど行われましたが、これまでアイテムが存在したのは初日である10月20日の公演のみ。翌日21日に関しても音源は存在していたのですが、それは音がこもっていた上に曲間のカットまであったという、文字通りのB級オーディエンス録音。

　それ故にこの20年間でアイテムが一切しなかった公演だったのですが、最近になって登場した新たなオーディエンス録音は一転して極上の音質を誇るのだから驚き。何しろオンな音像の迫力には圧倒されるばかりで、これほどまでに別格のクオリティを誇る音源がこれまでずっと眠っていたことにも驚きを禁じ得ません。それどころか1997年ツアーのオーディエンス録音としては、疑いなしにトップクラス。

　ショーの前半と終盤では音のエッジの歪みが生じてしまい、それが最後の「Brown Sugar」になるとリミッターが微妙に作動してしまうほどのオーバーピークとなってしまうこと。さらには「Jumping Jack Flash」の録音が終盤で終わってしまう点が何とも惜しまれるのですが、それを差し引いても驚異的な高音質はプレスCDでのリリースが必須だと断言できるクオリティ。

　そこで今回はそのような歪みをイコライズにて極力緩和（さすがに終盤二曲の問題は修正不可能ですが）。さらには音源が登場した段階で生じていた「Start Me Up」4:18で生じた音のダブりをアジャストし、まったく違和感がない状態へと補正。これによってさらに聴きやすい状態へと進化を遂げたのです。

 

　そしてストーンズの武骨な演奏ぶりを、その素晴らしい音質が余すことなく伝えてくれるがこの音源最大の聴きどころ。当時見過ごされていたバビロン・ツアー最大の魅力は、89年からのサポート・メンバー増加編成の中でもストーンズらしいワイルドなロック・サウンドを生み出すことにあったのです。それまでの過去二回のツアーのシステムナイズドされた大会場ライブ・サウンドで欠けていたストーンズらしさを取り戻したのがバビロン・ツアーでした。

　そんなストーンズらしさは10月に入るとアルバムのオープニングを飾った「Flip The Switch」のレパートリー導入、さらにはBステージへのバビロン橋セットの導入といった要素が相まって、いよいよ本領を発揮してみせます。実際にこの日の「Flip The～」も演奏は迫力満点。特に間奏の後はミックもバンドもエンジン全開で突っ走るのが素晴らしい。
　同じようにニューアルバム収録曲であり、しかもファーストシングルだった「Anybody Seen My Baby?」の演奏は今になって聴くと、どの日も微笑ましく感じられるほどなのですが、それは一重にアルバム・バージョンと比べると何とも拙いミックとバーナードによるラップ。それがまた今となっては懐かしく感じられることでしょう。

　バビロン・ツアーの中でも、特に1997年当時においてマニアをアッと言わせたのは60年代のストーンズ・クラシックを大量に投入してくれた点。この日も「19th Nervous Breakdown」に「Under My Thumb」という豪華な組み合わせですが、特に後者の演奏は勢い溢れる名演です。それに今から20年前の演奏ですから、まだまだ若いな…という風に新鮮に感じられる点も時間が経過したからこそ。

　そして今回のオーディエンス録音、もう一つの大きな魅力はBステージに入ってからも音像の変化がほとんどみられないこと。2002年のツアー以降ならいざしらず、初めてBステージが導入された1997年当時、そのセクションを録音することはテーパーにとって完全に関門と化していたのです。

　だからこそ、この安定感には驚きを禁じ得ません。そこで「Crazy Mama」が演奏されているのもマニアにはグッとくるポイント。バビロン・ツアーが軌道に乗り始めた時期のステージを迫力たっぷりの音質で捉えた新音源。もはや同ツアー1997年のオーディエンス録音を代表する新たなスタンダードだと言っても過言ではありません！

 

 

Disc 1 (66:06)
1. Intro. 2. Satisfaction 3. It's Only Rock 'n Roll 4. Let's Spend The Night Together
5. Flip The Switch 6. Gimme Shelter 7. Sister Morphine 8. Anybody Seen My Baby?
9. 19th Nervous Breakdown 10. Out Of Control 11. Under My Thumb 12. Miss You

 

Disc 2 (63:53)
1. Band Introductions 2. All About You 3. Wanna Hold You 4. Little Queenie 5. Crazy Mama
6. You Got Me Rocking 7. Sympathy For The Devil 8. Tumbling Dice 9. Honky Tonk Women
10. Start Me Up 11. Jumping Jack Flash 12. Brown Sugar